梅の香が風を伝う季節、皆様におかれましてはますますご清祥の事とお慶び申し上げます。今年もみなさまのおかげで無事、第24回高崎映画祭開催の運びとなりました。
世界的な不況も手伝ってか、09年度は日本映画界は全般的に低迷の一途を辿りました。邦画大手作品が辛うじて観客動員数を伸ばしたものの、 洋画の公開本数が驚くほど減り、洋画作品の集客率は下がる一方です。洋画の公開本数が邦画を遥かにしのいでいた5年前と比べると愕然とする数字です。洋画を買い付けても国内でその費用を回収できない懸念があると判断される状況に陥っています。そうして世界各国のすばらしき才能あふれる作品が日本に紹介されないという現象は、年々加速度を増しています。反面、邦画の製作本数は増えていますが、製作本数が増える事と映画鑑賞人口は比例するものではありません。事態の悪化は、 映画館の閉館や映画配給会社の倒産の話題が続くことでも見てとれます。
それでも今は、この事態にただ、耐え忍ぶ事が一番大切な事なのだと感じています。耐え忍ぶとは、今ある作品群をしっかりと受け止め、上映者が鑑賞者にきちんと丁寧に映画を届ける、ただそれだけに尽きると思っています。
そうして09年度公開作品を振り返ってみると、そこには映画の底力がしっかりと現れていました。そこで今年はそんなテーマで作品を取り揃えました。
高崎映画祭で上映される63作品はどれも、映画の力に満ちあふれたものばかりです。わかりやすい映画ばかりではありませんが、難しい映画ばかりでもありません。いろんな表情を持ち、いろんな背景を持って生まれた映画たち。それらには、作り手の顏が、誠意が、しっかりと現れています。そうした映画には人の心を動かし、人の心を打つ力があります。
お越し頂いた皆さまが、映画に力をもらい、その後映画に力を返せる、そんな事が出来たら、この不況にも耐え忍ぶ事が出来、明るい未来が見えてくるのではないか。そうして映画の底力に期待を込めて今年の映画祭を開催します。
人生を豊かに彩る映画との出会い、沢山の人々との出会いが沢山待ち受けている16日間をお約束します。
皆様のご来祭を心よりお待ちしております。
高崎映画祭事務局 総合ディレクター 志尾 睦子 |