「つなぐ未来のために」プロジェクト
コロナ禍を経て、映画を取り巻く環境は、また⼀つ別の局⾯を迎えました。Stayhomeをきっかけに、いつでもどこでも映画を観られる配信環境は更なる充実を⾒せ、映画を⾝近に感じる⼈たちが増えたと感じています。映画離れが叫ばれ続けたこの数年来において、「映画が好きだ」という声が増えていることは喜ばしいことだと思います。しかし⼀⽅で、映画館へ⾜を運ぶ観客は⼀定数に限られてしまい、特にミニシアターを始めとするインディペンデントや⼩規模作品を上映する映画館の存在意義は、時代の波に呑まれて更に薄れているように⾒えます。
高崎映画祭は、年に⼀度の映画の祭典として上映活動を続けています。映画に触れることは⼈⽣を豊かにすると信じている中で、暗闇の中知らない⼈と肩を並べて同じ映画を観るという<スクリーン体験>は、多種多様な映画を届けること以上に⼤切な活動
と捉えています。映画館や映画祭、上映会での鑑賞体験・スクリーン体験が⼈々の⽣活の中に根付くことを何より願っています。
時代に合わせながら、次世代へ映画を繋げていくために。37年の歴史を重ねてきた高崎映画祭が、さまざまな仲間たちと共に、「つなぐ未来のために」、映画をより⾝近に感じ、スクリーン体験をしたくなるようなきっかけをお届けする企画を進めていこう!と思い立ちはじまったのがこのプロジェクトです。
vol.1 俳優 佐津川愛美と「本」を作る
俳優・佐津川愛美さんは、映画・テレビドラマ・舞台・ラジオドラマやエッセイの執筆まで、その活動は多岐に渡り、ご活躍されています。映画においての出演本数は60本を越えますが、昨今では監督や演出も手がけられています。
佐津川愛美さんは、高崎芸術劇場が2020年に始動した若⼿演奏家を紹介するT-shotシリーズの第⼀弾で、ヴァイオリニスト荒井里桜さんのMVを監督されました。今回高崎映画祭はそのご縁を繋がせていただき、佐津川愛美さんと、次世代に映画を繋げる企画を⼀緒に考えました。
書籍タイトル 「みんなで映画をつくってます」
俳優としてキャリア20年をむかえる佐津川愛美さんが、映画づくりをより良く知るために、20⼈の映画制作者・関係者に会いに⾏き、お話を伺いました。映画はどうやってできるの︖どうやってつくるの︖映画が出来上がるまでに、必要な役割を担う⼈々の声を集めたインタビュー集です。
これからの映画づくりを考えていく本にしたいという思いを込め、そして、若い世代の人たちが素直に興味を持ち、目指したいと思える一助となるような、そんな本を目指しました。
「映画をつくる」 その全てを知りたい・伝えたい
佐津川愛美さん コメント
初めてのお芝居は「蝉しぐれ」という映画の現場でした。右も左も分からない新⼈。現場では⼤⼈たちがひとつの画をつくるために、⾃分の仕事に⼀⽣懸命でした。みんなで1つの作品をつくり上げる。その経験に14歳の私は⼼から感動し、映画に携わっていきたいと強く思いました。
デビュー20周年ということで、⾊んな企画が⽴ち上がりましたが、⾃分がやりたいことは20年ありがとうだけではなく、20年やってきたからこそ出来る、ご縁繋ぎかなと思いました。少し⼤それた⾔い⽅をしてしまうと、映画業界の未来に繋がる、お役に⽴てることが出来れば、そう思いました。この20年で出会って頂いた沢⼭の映画⼈の皆さんと、映画というものについて、わかりやすくお伝えする本をつくりたいです。何となく私が感じている映画業界というものは、少しお堅いイメージがあるように感じます。詳しくないと仲間に⼊れないような雰囲気を若い頃は感じていました。しかし、私が⼤好きな映画館は、1⼈でも、誰でも、いつでも、どこでも、静かに迎え⼊れてくれます。
⼤切な⼈と、知らない⼈と、肩を並べて1つの作品を共有する。1⼈じゃないということを感じさせてくれる空間ではないかと思います。映画業界は今、さまざまな意味で過渡期をむかえています。これからも映画制作が続けられていくためには、現場や取り巻く環境が今よりよくなることが必要です。映画のことを知ってもらいつつ、現状を俯瞰して、少しでも未来に繋がる⼀歩を。「映画をつくる」それは決して1⼈では出来ません。沢⼭のスタッフキャストが集結して、作品を観てもらって完成する。その⼀連の繋がりを、堅苦しくなく、ほんわりと、1冊にまとめてお届けしたいです。
知っているようで、知らない「映画づくり」のあらゆる側⾯を、私ももっと詳しく知りたいし、たくさんの⼈たちに知ってもらいたい。そんな思いから、映画づくりに携わる映画⼈のみなさんにインタビューし、それをまとめた⼀冊の本を作りたいと考えました。
佐津川愛美
プロフィール
1988年生まれ、静岡県出身。2005年『蝉しぐれ』(監督:黒土三男)で映画デビュー。
以降、映画・テレビドラマ・舞台とコンスタントに出演しキャリアを重ね、監督たちからの信頼も厚い。
主な出演作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07/監督:吉田大八)、フジテレビ 「最後から二番目の恋」(12)、『横道世之介』(13/監督:沖田修一)、『ヒメアノ~ル』(16/監督:吉田恵輔)、テレビ朝日「おっさんずラブ―in the sky―」(19)、「Birdland」(21/演出:松居大悟 @PARCO 劇場ほか)、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』(22)、NHK「大奥」Season2 医療編(22)、フジテレビ「Tokyo Woman」(23)主演、MBS系「サブスク不倫」(23)主演、映画『毒娘』主演(24/監督:内藤瑛亮)ほか、多数。
近年ではエッセイの執筆や、短編映画の監督も務めるなど多方面で活躍を続けている。
2024年は芸能界デビューから20年にあたり、佐津川愛美デビュー20周年記念特集上映が東京・高崎・名古屋・静岡で開催されている。
書籍情報
目次
まえがき
1 映画は一人では作れないから、コミュニケーションが大事 監督とプロデューサー/大九明子 永井拓郎
2 現場の全てを把握して整える 助監督/玉澤恭平
3 みんなが自由に撮影できる現場を作る 制作/守田健二
4 画面に映らないものまで作り込む 美術と小道具/小林蘭 矢野浩加
5 ビジュアルでキャラクターを作り上げる 衣装とヘアメイク/高橋さやか 有路涼子
6 カメラと芝居が連動する瞬間が面白い 撮影/今村圭佑
7 空間と発想を光で補う 照明/平山達弥
8 最高の演技を録音するために 録音/根本飛鳥
9 監督の目指す100点を120点にする仕事 編集/平井健一
10 色と明るさでストーリーを伝える カラリスト/石山将弘
11 「いい音を作る」よりも大事なこと 音響効果/勝亦さくら
12 映画の劇伴は映像の「伴奏」 音楽/侘美秀俊
13 すべては「映画館に人を集める」ために 宣伝/高松美由紀 伊藤さとり
14 作り手と観客をつなぎ、映画文化を育てる場 映画祭と映画館/小林恵 志尾睦子
あとがき
奥付
著 者:佐津川愛美
編 集:花井優太
文・構成:小山田裕哉、上條葉月
デザイン:横山 雄、矢川ぐん
制 作:高崎映画祭
想定読者:映画に興味がある中⾼⽣や映画の仕事をしたい若者たち/映画ファン
仕 様:四六判変形 W128×H180mm 180ページ
定 価:本体価格 1,819円+税(販売価格 2,000円)
発 行:高崎映画祭/SDI総研
10月27日(日)より 販売開始
10月27日に、佐津川愛美さんの御出身地である静岡で、佐津川愛美映画祭が開催されます。
その日を記念して発売日といたしました。佐津川愛美映画祭@静岡東宝会館では1日限りで書籍販売をいたします!
「みんなで映画を作ってます」の販売は、発売日よりシネマテークたかさき店頭並びにオンラインショップで行います。
順次、全国各地の映画館等でも取り扱いを広げていく予定です。皆さまからのご要望や応援をいただけたら嬉しいです。
順次販売箇所をアップデートしていきますので、どうぞよろしくおねがいします!