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ごあいさつ

shiogazou1志尾睦子

 残雪やごうごうと吹く松の風
 —村上鬼城
 春を待つ心に季節の装いが近づいてくる、そんな印象を受けるこの句が好きです。ごうごうと、荒々しい音を立てて吹きすさぶ風は、芽吹く草木の生命力を掻き立てるお囃子のように感じられます。厳しい冬を越え迎える春の訪れは、新しき出会いと成長を必ず運んで来てくれると思えるのです。


 そうした春の入り口に、第30回高崎映画祭の開催を、皆様にお知らせできる喜びを噛み締めております。時代、時代を作り上げて来られたのべ数千にもおよぶボランティアスタッフの皆さまにまず感謝の辞を述べたいと思います。そして、高崎映画祭の趣旨に賛同しご協力くださった協賛企業さまや関係各者の皆さま、映画関係者の皆さま、全国の仲間たち、そして会場に足を運んでくださった観客の皆さま、たくさんの方々のお力と熱意に支えられ、高崎映画祭は30年の年月を積み重ねて来ることができました。この場をお借りして、深く感謝申し上げます。また、先達への敬意を改めて表したいと思います。


 1987年に映画祭を始めた先人たちは当時、30年後をどう見据えていたのでしょうか。地方の映画環境が30年後どうなっていたらいいと想像していたでしょうか。映画環境が変わっていくことを予想はしていたかもしれませんが、そこにはどんな未来が描かれていたのでしょうか。今を生きる私たちが、30年間の映画祭を振り返るにつけ、万感の思いが押し寄せてきます。
 様々なことが変わってきました。良しにつけ悪しきにつけ、映画を取り巻く環境は変わり、時代が流れ今があります。そうした中において、ただ一つ変わらないものがある。映画が人の心を豊かにするということです。上映素材が変わろうとも、観る環境が変わろうとも、映画とともに生きる人生が温かく、豊かであることは揺るぎない。単純なことのようですが、それは大変に尊いことなのだと思うのです。映画には作り手の人生が詰まっています。手をかけ、心をかけて丁寧に作られた映画は、人の心を動かします。作り手の思いを、エネルギーを、人生を、できるだけホットな状態で、最良の状態で観客の前にお届けする。それが私たちの役目だと思っています。今も昔も変わらない、上映者の心を大切に、今年も高崎映画祭を開催してまいります。


 映画を軸に、たくさんの出会いが広がりますように。多くの楽しい出来事が待っていますように。みなさんへ、映画の愛がきっと届きますように。
 今年も春の高崎を、映画とともに楽しんでいただけたら幸いです。
 皆様のお越しをお待ちしております。

 

2016年 春
高崎映画祭 プロデューサー 志尾睦子

第30回 高崎映画祭 授賞式
日時:2016年3月27日(日) 16時より
会場:群馬音楽センター(群馬県高崎市高松町28-2)


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