Greeting

風光る季節、今年も高崎映画祭の春を迎えることが出来ます。

純粋に映画が好きだ、映画を届けたい、という想いを寄せあった同志たちが、手作り・手探りで始めた映画祭は、たくさんの方々の手を借り、回を重ねてまいりました。今年で38回目、「高崎映画祭」という冠を今年も掲げられること、心より感謝申し上げます。会場に足を運んでくださる映画ファンの皆さま、志に共鳴しご協力くださる皆さまのお力があってこその開催です。この場をお借りして深謝申し上げます。

「来年の開催は当たり前ではない。」

第13回から高崎映画祭のスタッフに加わった私が、その年最も衝撃を受けた言葉です。目の前の映画祭の準備に追われる中、「今年は準備が間に合わないところもあるから、来年に活かそう」と誰かが言った発言に対して、当時のディレクターが鋭く突っ込んだ言葉でした。入ったばかりの私でしたが、高崎映画祭はこの先もずっと続くものという意識がありました。もちろん、核となるメンバーたちには展望があり、先々を見据えて活動をしていたわけですが、この1回の開催がどれだけ容易ではないか、資金繰りや周囲の信頼を獲得することがどれだけ大変な事なのか、その重みが、この一言に乗っていました。

以来、私もその気持ちで、今年も開催できることの喜び、ありがたさを胸に進んでまいりました。その言葉の真髄は今でも忘れる事はありませんが、40回という数字が見えてきた今、そこへの歩みを考え、敢えて先々の約束をすることにしました。

自分も歳を重ね、次世代に繋げていくことが使命だと考えるようになったからだと思います。 40回の高崎映画祭をどう迎えるか。そこを意識しての第38回高崎映画祭を開催します。プログラムには地域に根ざした映画祭の意義をふんだんに盛り込んだつもりです。そしてもちろん、映画そのものの魅力と力を、次世代に伝えたいという想いを込めました。

時代が変わり、映画を観る環境が変わる中で、130年の歴史を持つ「映画」をどう伝えていくか。映画の醍醐味、不思議さ、崇高さ、芸術性や文化性ありとあらゆる魅力を、地域に根ざした映画祭として守り伝えていけるのか。そんなことを考えながらプログラムを組み、ゲストを迎え、楽しく、愉快に、時には頭を捻りながら、今年も高崎映画祭を開催します。

映画を届けることが、人を繋げていく。
この真理を、ますます深めてまいりたいと思います。
今年も皆様に、映画と、そして人との素敵な出会いがありますように。
春の高崎を、映画と共に楽しんでいただけたら幸いです。

高崎映画祭 プロデューサー 志尾睦子