日本映画の未来を担う若き才能の発掘と育成がこのプログラムの目的です。毎年、可能な限り各作品の監督をお招きしたいと考えています。観客の皆さまには新しい映画人との出会いとなることを願い、また、若手監督たちには観客の声を直接届ける場となることを願っています。
機材や製作行程にまつわる諸々が数十年前に比べれば飛躍的に<扱いやすく>なりました。撮影し、人の目に触れる形にすることも、劇場公開にこだわらなければ、インターネット上でも出来るようになり、今や誰もが形の上では「映画監督」になれる時代です。誰にでもなれるからこそ、批評の目にさらされた上での認められるべき<若手映画監督>がいて欲しいと私たちは考えます。
群馬県前橋市出身の飯塚花笑監督は、前作『僕らの未来』で自身を映画に落とし込み、拙いながらも表現者としての力量を見せてくれました。新作『青し時雨』は、シェアハウスに身を寄せる5人の若者たちの青春を描きます。手の届く範囲の世界を等身大で描く、その自由さに長けた作品です。
伊参スタジオ映画祭から生まれた『震動』と『独裁者、古賀。』はシナリオ大賞を映画化しただけに物語の骨格がはっきりしていて、安定した題材ですが、それをいかに<映画的に>人に見せてゆくのか、において群を抜いています。
『自分の事ばかりで情けなくなるよ』は、孤独や不安を抱えた若者たちを捉えた群像劇。確かな演出力に裏打ちされた役者の好演に、安定した実力を感じます。異質な面白さという点では『尻舟』(2009)の宮本杜朗監督の二作目『太秦ヤコペッティ』、脳内を映画化していくメカニズムには、不思議な魔力があります。その宮本監督がてがけるドキュメンタリー『SAVE THE CLUB NOON』は至極真面目なドキュメンタリー。日本の音楽シーンにおいても重要な記録といえます。
鋭い洞察力で社会的テーマも盛り込みながら大胆に物語を転調させて行く手腕が光る『かしこい狗は、吠えずに笑う』
アンニュイな雰囲気ながら深い余韻を残す田崎恵美監督『海にしずめる』
青春のもどかしさあどけなさを真っ正面から切り取る『SPINNING KITE』
感受性豊かで複雑な少女の心理を、独特なタッチで自在に描き出す『あの娘が海辺で踊ってる(完全版)』
迷い人たちの道しるべとなるのは、故郷。そんな思いに立ち返る『リュウセイ』さまざまな観点、さまざまな切り口で選び出した全12作品にはそれぞれの強い個性が光ります。